一輪車の指導マニュアル
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林 雅彦

はじめに
 平成4年度より小学校の3・4年生の体育に一輪車がはいりました。しかし、一輪車の指導のできる先生はほとんどいません。聞くにしても、聞く人もいないのが現状です。一輪車はある、子供たちも何とか乗れるようになった。次に何をすればよいのかと困っていられる方がほとんどです。このような人のために、何か参考になるものはと思い、作成することにしました。

§1.自分にあった一輪車

1.一輪車の選び方
 一輪車にはいろいろなメーカーがあります。メーカーによって乗りやすい乗りにくいということがありますので気をつけて下さい。気をつけてといっても乗ったこともないのにどれがよくて悪いかということはわからないと思います。また、学校で購入するということで購入先が決まっていてこちらからメーカーをなかなか指定することができないのも事実だと思います。
 それでは、一般的なよい一輪車の見分け方について書きます。まず、第一にサドルです。サドルはメーカーによって本当にさまざまです。特に全体重をサドルに乗せますし、転んだときに一番衝撃がかかる場所です。サドルは股にはさむため、中心が細くなっているものがいいです。サドルの前より後ろの方が少し大きめになっていて、本体はプラスチック製で前後にプラスチックのプロテクターがついているものがよいです。金属製だとぶつけている間に変形し角で服や股が切れるようになります。
 続いて、フレームとスポークとリムですがこれは金属がいいと思います。上級技術を行うときプラスチック製だとぶれたりゆがんだりしてしまいます。また、リムがプラスチック製だとタイヤに空気を多めに入れるとはぜてしまいます。
 ペダルとクランクですがこれは購入するときに右と左がまちがいなくついているか気をつけて下さい。自転車屋でさえも左右をまちがえているところがよくあります。まして、左右の区別のないようなものは絶対にダメです。左右の区別ですが、ペダルにはRとLと書いてあります。Rが右、Lが左です。また、クランクは右にRと書いてあり左は何も書いてありません。右と左とどう違うかというと右はペダルとクランクとのネジが右ネジになっていますし、左は左ネジになっています。これは通常前進するとネジがしめられるようになっています。(しかし、しっかりとネジをしないとゆるんできます。)
 個人的に使うにはあまり関係ありませんが、学校などで使うには1台にいろいろな生徒が乗ります。背の高い子もいれば低い子もいます。ですから、サドルの高さは簡単にかえれる方がいいわけです。サドルと本体の締め付けはクイックレバー式がいいかと思います。
 以上あまり細かいことを言うときりがなくなりよい一輪車がなくなってしまいますのでこのぐらいにしておきます。一輪車の選び方の一番いいのはやはり一輪車の上手な人に聞くのが一番です。自転車屋に聞いて買う人がいますが自転車屋も一輪車にはほとんど詳しくありませんので信用しない方がいいようです。

2.一輪車の大きさ
 一輪車の大きさとは車輪の大きさのことです。
 年齢や身長により一輪車の大きさは異なります。やはり自分にあった大きさのものを使わないと上達が遅れますので気をつけて下さい。車輪のサイズは12インチ・14インチ・16インチ・18インチ・20インチ・22インチ・24インチとあります。目安ですが16インチは小学3年以下用、20インチは小学2年から中学生用、24インチは中学生から大人用とわけられるのが普通です。これは、一つは一輪車の競技会などでインチ、年齢がこのように分かれているためです。しかし、私が思うには足がとどかなければ仕方がありませんが、大人でも20インチが一番練習にはてきしているのではないかと思います。参考として、競技などに使われる車輪のサイズは16・20・24インチです。

3.サドルの高さ
 サドルの高さは、よく降りた状態でおへその高さになるように調製しますと言われています。私も普段は多くの人を講習するときにはこのように言ってしまいますが、車輪の大きさやクランクの大きさによって変わってしまいますので、あくまでも目安として使って下さい。
 では、本当の高さとはどれくらいがいいのでしょうか。初心者にまず乗って下さいと言っても無理がありますが、どこかにつかまってやってみて下さい。まずしっかりとサドルに腰掛けます。足とペダルの位置ですが足の親指の付け根がペダルにしっかりと乗るようします。この状態で左右どちらか一方のペダルが真下にくるようにし、そのときわずかに膝がまがる程度にするのがよい高さです。もし、つま先でなければ届かない(高すぎ)、膝がまがりすぎる(低すぎ)でしたら調節して下さい。
 一般的にサドルが低すぎる人が多いようです。高いと何となく恐怖心がでて少しでも低い方がいいような気がしますが、これはまちがいです。高いと言っても目線でわずか歩道に上がったぐらいの高さですから安心して下さい。低いと上達を遅らせるだけでなく、膝に負担をかけるため痛めるときもありますので注意して下さい。

4.タイヤの空気圧
 タイヤの空気圧ですが乗る人の体重によっても違いますが、固めにいれて下さい。乗る人がタイヤを手で押さえてみてへこまない程度がいいかと思います。よく初心者には空気の少ない方がいいと言って乗っている人がいますが、単にまっすぐ進むだけならばいいのかもしれませんが、上手くなろうと思ったらダメです。また、タイヤやチューブにとってもよくないことです。最初は空気が多いと左右にふれて乗りにくいかもしれませんが、最初が肝心ですから、多めにいれて下さい。
 よく先生方に聞かれることですが、空気がよく抜けてしまうためどうしたらいいかと言われます。これと言った予防法はありません。といってしまうと話が続きませんので私の考えをかきます。1つは学校で教育に使うわけですから一輪車に乗る前にまず一輪車を点検するということをやらせて下さい。これは、空気だけでなく他のネジなどもしっかり点検して下さい。つねに空気がはいっていた方がタイヤやチューブはもちがいいですし、つねに空気をいれていればいっぺんにいれる量が少なくてすみます。もう一つは終わった後一輪車をきれいにすることです。砂などがタイヤや特に空気をいれる口などについていると空気漏れの原因となりますから気をつけてください。

§2.指導上の留意点

1.安全について
 一輪車と言うと一昔までは、サーカスのやることと思われていました。今でも、先生方や保護者といった大人の人の中には思っている方が多いのではないでしょうか。サーカスと言うと危険なものと思いがちで一輪車も危ないものと考えられて、けがをするのではないかと心配されます。講習会でけがについてよく聞かれます。スケートやスケートボードなどを考えて下さい。初心者が止まろうとしても止まることができず足をすくわれて転んでしまいます。しかし、一輪車はペダルを止めればタイヤも止まってしまいます。また、ペダルから足がはずれればタイヤを止めることができなくなりますが、足はペダルからはずれれば、自然に地面につくようになっています。自転車のように勝手に走っていったり自転車の下敷きになって転ぶということはありません。一輪車は左右前後どこでもすぐに降りることができ下敷きになることもないからです。ですから、一輪車は非常に安全な乗り物だと考えられます。でも、歩いていてもけがをするわけですから全くけがをしないとは言えません。それと、無理なこと要するに初心者がいきなり高等技術をやったり、ふざけたり、約束を守らないと事故が起きてしまいますのでその辺は気をつけて下さい。
 なんでもそうですが、一生懸命になってしまうと周りを見ることができなくなり運動視野はきわめてせまくなってしまいます。だから、自由に練習させると、転がってきた一輪車にぶつかったりして思わぬけがをする事があります。練習するときは、初心者はできるだけ一方通行で一人づつの間隔をあけて行って下さい。また、レベルの違いによって練習場所をわけた方がよいと思います。よくある事故として、他人の一輪車がとんできてそれにぶつかってけがをすることがあります。これには十分気をつけて下さい。

2.服装について
 服装はスポーツのできる格好と言うのが基本です。服はできるだけ動きやすいかっこうにして下さい。また、最初の練習はかなり運動量がありますので汗をかいてもいいようにして下さい。ズボンは半ズボンでも長ズボンでもどちらでも結構ですが、人によって好き嫌いがあるようです。半ズボンは股のところにかなりの負荷をかけるため傷をつくってしまうことがあります。しかし、直接サドルをはさむことができるため安定するという人もいます。長ズボンは股のところにしわがよってしまって股を痛めたり、膝の自由度をなくしてしまったりします。しかし、股に傷がつくことは少ないです。それと長ズボンで気をつけなければならないことは、裾です。裾が広いと引っかけたりして非常に危険ですから、気をつけて下さい。最近は一輪車の愛好者の中ではサイクルパンツが流行のようです。
 次に靴ですが、運動靴が一番だと思います。サンダル履きや、底が滑りやすい靴またかかとのある靴では乗らないで下さい。素足で乗せている学校もありますが、ふだんそれになれてしまっているし今までけがもないといわれますが、いろいろなことを考慮した場合、素足というのはどうかと思います。あと、靴紐には十分気をつけて下さい。よく一輪車にからみついてしまうことがありますから。それと、必ず靴下を履いた方がいいです。最近は一輪車もよくなりクランクなどのふちが面取りしてあるようになりましたので切ることはすくなりましたが、それでもくるぶしをけがしてしまうことがありますので、保護のために必要です。
 服装とは少し違いますが、防具などをつけた方がいいのかとよく質問されますので防具についてかきますが、私は必要ないと思います。ヘルメットですが、かぶったことがある人はわかると思いますが、結構重たくじゃまでわずらわしく汗がかきやすくなります。頭が重いとバランスというのはとりにくくなりますし、足がすくわれて頭を打つということはほとんどありません。また、肘や膝当てなども、動きを鈍くするだけだと思います。

3.一輪車について
 これは、まえにもかきましたが、自分にあったものをしっかりとサドルなどの調整をして乗って下さい。それと、常に故障箇所がないか点検して下さい。

4.練習場所について
 転んだときに少しでもやわらかいところの方がいいのではないかと思い。芝生やマットの上で練習する人がいますが、これはまちがいです。やわらかいところですと、タイヤがそこにのめり込んでしまい自由がきかなくなり乗りにくくなってしまうのです。また、でこぼこが多いとスムーズな動きができなく変に力がはいってしまってダメです。練習はやはり平らなコンクリートやアスファルト、体育館の中などがいいと思います。ただし、学校の中ではなかなかいい場所が少ないのではないでしょうか、そういう時は土の上でもやむおえませんができるだけでこぼこの少ない固いところでやって下さい。あと、体育館の中だと床に傷がつくといって、ビニールなどを引いてやることがありますが、これは滑る原因になり危険ですからやめて下さい。
 初心者は一輪車をよく飛ばしますし、落ちたりします。ですから周りに一輪車があたったらいけないようなもの、またはけがの元になるようなものある場所ではやらないで下さい。
 一輪車で普通の道を走ることはできるかというと、法律的には詳しくはわかりませんが、私は、いいと思います。ふだん一輪車で買い物などによくいくようです。両手があいていますから、荷物を持つことができるため便利だというわけです。というのは追いといて、実際一輪車というのは自転車より安全な乗り物です。自転車が走れるのであれば問題はないのではないでしょうか。一部の人が一輪車は危ないものだといっていますが、危ないといっている人は一輪車に乗れない人なのです。乗れもしないものを危険か安全か決めることができるものなのでしょうか。私もよく道路で乗っていますが全く問題はありません。それより、歩行者の方がもっと危険です。ただし、初心者は道路では乗らないようにして下さい。練習はちゃんとした場所でやって下さい。私が思うにはアイドリングが確実にできるようになれば、道路で交通の手段の一つとして使ってもいいかと思います。

§3.一輪車の乗り方(基本編)

 一輪車の乗り方には、いろいろなやり方があります。年齢や場所などいろいろな要素により練習の仕方が異なります。その場でのいちばんいい方法は、これからのことを参考にしてやってみて下さい。
 先生方で子供は乗れるようになったが私は無理だと思われている方が多いようですが、一度挑戦してみて下さい。私が教えた中には60歳をすぎてから始められた方もたくさんみえます。去年行われれたマラソン大会には68歳の方が10kmの部に参加され完走されました。あきらめずにがんばって下さい。

1.練習量について
 目新しいことは最初、はりきって時間も忘れて練習をよく行います。でも、一番大切なことは時間は短くても毎日練習することが大切です。3日に1回3時間練習するよりも、毎日1時間ずつ練習した方が上達は速いと思います。
 大体どれぐらい時間をかければ乗れるようになるかもっとも知りたいことの一つではないでしょうか。これは指導の仕方によって違いますが、私の場合で条件がよければ小学生で1日1時間3〜4日で10m以上みんな乗れるようになります。大人だと年齢にもよりまずが倍くらいかかると思って下さい。
 先生対象の一輪車講習会の場合は大体4〜5時間ぐらいでまったくの初心者が数回10m以上乗れた先生が1〜2割ぐらいいます。また、いままで練習してみたが全然乗れなかったという先生もかなりの人が10m以上乗れるようになって帰ります。
 一般に恐がる人は時間がかかるようです。ですから、子供達は恐さを知りませんし、頭で考えずに自然に乗っていけるようになります。また、少しぐらいの失敗もなんとも思わないようです。ところが、大人はけがをしたらいけないとか、バランスを取るのにいちいち頭でここをこうすればいいとかああすればいいと考えすぎで上手くいかないのです。

2.基本姿勢について
 一輪車に乗ると姿勢がよくなるといわれています。これは一輪車に乗るには正しい姿勢でなければバランスがとりにくいわけで、姿勢が自然によくなっていきます。一輪車の姿勢はまずサドルにしっかり座ることです。サドルの高さの調整で書いたように、しっかりとサドルに腰掛け、足とペダルの位置ですが足の親指の付け根がペダルにしっかりと乗るようにし、この状態で左右どちらか一方のペダルが真下にくるようにし、そのときわずかに膝がまがる程度に調節して下さい。そして、サドルにしっかりと座ったら腰と背中をまっすぐにのばして下さい。一輪車が停止しているときはタイヤが地面と接しているところと頭が地面に対して垂直になるようにして下さい。前進するときは少し前に傾ける気持ちになります。スキーなどをするとき初心者はすぐ近くを見てしまいます。これは不安だからです。でも、これが上達を遅くする原因の一つになるのです。下を見ていても思い通りにはなりません。進む方向をしっかりと見るようにして下さい。初心者は気持ち遠くを見すぎるぐらいでちょうどいいのではないでしょうか。手の位置は肩の力を抜いて腰の横ぐらいに軽く広げた状態がいいかと思います。はじめの内は手を必要以上に動かします。特に大人の人に多く、私はいつも麻雀スタイルと読んでいますがはじめはあまり気にしないで下さい。手を動かすことによってある程度バランスを取っているわけですから。子供たちもだいぶ乗れるようになった子に、両手を頭の上にのせて乗ってごらんというとほとんど上手く乗れなくなってしまいます。それだけ手というのは重要な役目をしています。しかし最終的には自然に体全体でバランスがとれるようになりたいものです。

3.動きになれよ
 一輪車という乗り物はふだん使っている動きとは違います。自転車のこぎ方とも違います。また、スケートやスキーなどのようにすぐに一人で立つことができるものでもありません。このことが一輪車は難しいと思われるところではないでしょうか。いままで挫折した人の話をきいてみると、ほとんどの人が一回転も回すことができずにあきらめてしまうようです。
 はじめに一輪車に乗るためにしなければならないのは、一輪車のペダルの回し方をしっかりと体に覚えさせることです。補助者や物を使ってできるだけ長い距離を走り動きになれてもらうことが乗り方の近道です。補助も使わずにいきなり乗っても転んでしまって結局一回転もできずに終わってしまわないようにして下さい。自分一人で乗ろうと思わずに補助を使ってなれて下さい。補助を使って楽に乗れるようになったら徐々に補助から離れていって下さい。特に大人の人は恐さがありますので。

§4.一輪車の乗り方(実践編)

1.手すりについて
 一輪車の練習で一番いい方法は手すりを使って行うのがいいと思います。手すりはしっかりしていて持ちやすいため安定した練習ができます。しかも、一人で行うこともできます。しかし、都合のよい手すりはなかなかないのが欠点です。
 では、どのような手すりがよいかというと、手すりの高さは、一輪車に乗った状態でおへその少し上ぐらいがいいと思います。手すりの太さは手で軽く握りやすいぐらい。距離はできるだけ長い方がいいです。地面も考えて下さい。というと一輪車専用でつくらなければなかなかありません。これは、もっともよい条件を想定しています。しかし、なければ練習できないかというとそうでもありません。似た物を使うこともできます。例えば、ろく木・鉄棒・平行棒・長机などがあります。これらを使うときに十分注意してほしいことはしっかりと固定されているか確認して下さい。一輪車ごと手すりまで倒れてくるということがよくありますから。あと、壁はどうかというと、まったくの初心者にとってはつかみどころがないため無理がありますが、少し乗れるようになったら壁もいいのではないでしょうか。

2.補助者について
 手すりなど補助具がないと無理かというと、そうでもないです。人を使う方法もあります。最初は補助者は2人で左右両方について下さい。ある程度楽になれば一人でもいいでしょう。手の位置は一輪車に乗っている人のおへそより少し上から胸の高さぐらいにして下さい。なれないとすぐ肩より上になりがちですがこれはあまりよくありません。乗っていてバランスをくずすと補助者はつい手を上げてなんとかしようとしますがその場はよくても上達にはなりません。手のつなぎかたですが補助者は手のひらを上にむけて、乗っている人はその上に乗せる感じにして下さい。はじめは、この状態でしっかりと手を握ってもかまいませんが、だんだん手の上に乗せているだけにしていき、徐々に手から離れるようにしていって下さい。補助者の位置ですが、前進するのであれば、すこし前にでてあげて下さい。最初はだいたい車輪が半回転したら乗っている人の真横より気持ち前側ぐらいになるような位置にたって下さい。だいたい目安として、車輪の前部より少し前ぐらいです。

3.乗り方について
 では、実際に乗る練習をしてみましょう。タイヤを前にしてサドルを股にはさんで下さい。はさんだら足をペダルに乗せるわけですがこれは好きな方からで結構です。好きな方のペダルを一番下へ持っていって下さい。このとき、タイヤを少し浮かしてタイヤを回せばペダルは動きます。ペダルは一番下より少し後ろにさげて下さい。真下を0度とすれば45度ぐらいさげて下さい。そのペダルに足をかけます。足の位置は足の親指の付け根がペダルにしっかりと乗るようします。次に補助をしっかり持って下さい。そして、上に伸び上がるようにしてペダルにかけてある足に力を入れて下さい。あとは、逆の足もペダルに乗せればこれでなんとか一輪車には乗りました。次に、ペダルを両足とも同じ高さになるように、言い替えるとペダルとクランクが地面と水平になるように前後して下さい。これが一番安定している基本の形です。
 ここまででよくまちがえることをいいますと、ペダルの高い方から乗ろうとしたりする人がいます。これは、危険ですからやめて下さい。ペダルが上にあるとそこに力を入れると車輪は回っていってしまいます。ペダルを一番下にして力を入れておけば車輪は回るということはありませんから。
 基本の形ができたら、半回転前に進んでまた基本の形になって下さい。基本の形になったら十分バランスを取り直して下さい。安定したらまた半回転前にでて下さい。このように半回転づつバランスをとりながら前に進んで下さい。半回転がスムーズにいくようになったら次は一回転ごとにバランスをとるように距離をのばしていって下さい。
 乗れば降りなければなりません。降り方もしっかり学んでおかないといけません。降りるときはペダルをどちらか一方を一番下にさげて下さい。ペダルから足をはなすときは上の足からはなし、サドルの前を持つてゆっくりと後ろへ降りて下さい。後ろに降りるのではなく、前に降りても結構ですがその時はサドルの後ろを持つとよいでしょう。しかし、格好からいくと後ろからがよいでしょう。降りるのが上手くいかないと、一輪車を飛ばしてしまうことになりますので気をつけて下さい。
 あとは前にも書いたように一輪車に十分なれて下さい。なれてきたら補助から手をはなすわけですが徐々に手をはなすようにすると恐さが少なくてすみます。手すりを使うならば手すりの上を手が滑るように乗っていってください。補助者ならば軽く手をふれている程度にして下さい。両方ともにいえますが、止まった状態から走り始めるのは難しいかと思います。ですから、ある程度回転がスムーズになったら手をはなして下さい。よく手をはなすと止まってしまう人がいますので、止まらないようにしっかりこいで下さい。前進のスピードはだいだい早足で歩く程度がいいかと思います。ゆっくりだと止まってしまいますから、どちらかというと速い人の方がおもいっきりもあり上達も速いようです。
 乗り方としては、このようにおこなうのですが、文章だけで写真なども使わずに教えるのは非常に難しようです。これで内容がわかりましたか。いつもならば、実際に一輪車を使って見本をみせながら解説していくのですが、ここではそうはいきませんので、あしからず。

§5.補助なし乗車

 乗車と降車は、一輪車の練習には必ずついてまわります。降車は失敗の数に比例して練習ができます。しかし、乗車はそういうわけにはいきません。一人で一輪車に乗れるようになったというのは、補助なし乗車が確実にできるようになってからです。これができれば一人でどこからでも一輪車に乗れるようになります。

1.補助あり乗車
 はじめに乗車の基礎は、静止物を利用して止まった状態からのスタートです。今までは、ある程度車輪を動かしておいてから補助物から手をはなしましたが、これからは車輪を止めた状態からバランスをとって補助物から手をはなして乗っていきます。まず姿勢ですが、腰・背中をしっかり伸ばして、顔は足元を見ずに進む方向を見て、手は少しひらいてバランスをとりやすくします。ペダルの位置は水平で、ペダルに力を入れすぎないように、体重はサドルにどっしりと乗って下さい。いよいよスタートです。まっすぐ乗った姿勢をちょっと前に傾けてそれをきっかけにペダルをこぎはじめて下さい。

2.走行姿勢
 乗車ができてもすぐに降りてしまっては、何もなりません。乗車ができたというのは、車輪が動き始めて自分の意志で数回転できたことです。スタートしてすぐに降りてしまったのでは乗車とはいえません。乗車の練習では、乗車して10m以上走行してから正しい降車の繰り返しをやるのがいいです。そのためには確実に走行ができるようにしなければなりません。前に進む距離を伸ばすためには、少々のバランスの崩れ、一輪車のぶれは立て直さなければなりません。はじめは、左右のいずれかにぶれたら無理に一輪車の方向を変えようとせずに向いた方向に踏み込むようにして一輪車まかせに進んで下さい。無理に上体を使って立て直そうとするとバランスをくずしてしまいますからよくありません。手の動きなどが煩雑になりまずがあまり気にしないでとにかく前に進むことを考えて下さい。

3.補助なし乗車
 はじめて人に補助なし乗車を教えるには、2通りのやり方があります。人それぞれ癖がありますから、どちらがいいかというとどちらともいえません。どういう方法かというと、一つは半回転バックしてから進む方法と、もう一つはそのまま進む方法です。
 半回転バックしてから進む方法ですが、乗車の方法としてはこれが一番多くの人が使っています。乗り方のところでやったのと同じように、サドルを股にはさんで、ペダルを少し後ろに引いておいて下さい。そして、足に力を入れて伸び上がると自然に一輪車は後ろに下がります。もう一方の足もペダルへもっていくのですが、ペダルを足の裏で後ろへ押しつけるようにし、最初にペダルに乗せた足が平行状態の前側にくるまでバックして下さい。ここでバランスをくずしてしまう人が多いようです。少し腰をまげながらバックすると一輪車にのりやすくなります。それと足に力をいれないで下さい。ペダルが水平状態になったら、腰を伸ばしながら前に進み出して下さい。
 次にそのまま進む方法ですが、これは子供が得意です。体重が軽くて変に力がはいらないからいいのでしょう。はじめは半回転バックしてから進む方法と同じで、伸び上がるときに一輪車を後ろに下がらないようにバランスをとり、もう一方の足をペダルに乗せてそのまま踏み込む方法です。たいてい普通の人は伸び上がるときにバックしてしまいます。

§6. 左右のカーブ

 まっすぐ進めるようになったら、次は自分の行きたいところに行けるようになりたいと思うでしょう。そのためには、左右自由自在にカーブができるようにならなければなりません。カーブの仕方にもいろいろな練習方法があります。そのいくつかを紹介します。

1.カーブの仕方
 一輪車の練習で常に気をつけることがあります。それは正しい姿勢です。カーブの仕方も例外ではありません。上体の姿勢・視線・手の構えに気を配ることが大切です。カーブをしようとして意識が強いと、つい体に力がはいっていまいバランスをくずしてしまいます。特に、ペダルに体重がかかってしまい倒れていってしまいます。カーブの仕方は、回りたい方に視線を向けることが第一です。次に、手を少しひろげて回りたい方の手を少し引き気味に逆の手を少し前に出すようにして下さい。そうすれば、自然に一輪車が傾き曲がっていきますが傾きすぎると倒れてしまいますので注意して下さい。上手くなると手を使わずに身体全体を使って回ることができるようになります。しかしはじめの内は、あまりよい方法ではないのですが、手を十分使って(振ったりする)やってみて下さい。とにかく格好よりも回ることを第一に行って下さい。また、左右いずれか一方が得意になり、一方が不得意になるものですから、左右いずれの回転もスムーズにおこなえるように左右交互に練習して下さい。

2.8の字走行
 三角コーンや空き缶などの目標物を用意して下さい。この前小学校の体育館で講習を行ったときは玉入れの玉を使いました。このコーンを2つ10mぐらい離して置きます。そこで8の字を描くように回って行きます。はじめは大回りしても結構ですから失敗しないようにやって下さい。そのうちコーンの間隔を狭くしていって下さい。通常は3mぐらいの間隔で直径3mぐらいの円を描いて練習するとよいと思います。技術認定基準に使われる8の字走行は、円の中心の間隔が2.8mで、円の中心から1.5mと1.1mの円を描き、その40cmの範囲内の走行車線でなめらかな走行をもって合格をするとあります。慣れないうちは左右にぶれることが多いでしょう、特に左右の切り替えの時が難しいです。しかし、慣れてきたらきれいな左右同じ大きさの円を描くようにして下さい。

3.スラローム(ジクザク走行)
 1mぐらいの間隔でコーンなどを10個置いて下さい。このコーンをジグザグに走って行きます。はじめは1つおきぐらいに走るといいかと思います。できるだけ直線的に通り抜けれるようにして下さい。姿勢の見た目は一輪車の向きと身体の向きが逆になっているかと思います。これは、すでに次の方向の準備にはいっている証拠です。一輪車競技規定では助走4m、コーン10個を各90cm間隔に設置するとあります。

4.スーパースラローム
 最近競技大会によく使われるようになった種目ですが、これはコーンを幾つか置きコースをつくりタイムを競う競技です。コーンをジグザクに走ったり、コーンを一周回ったりするように、あらかじめチョークなどでコースを描いておき走るのですが、これは結構カーブの練習には飽きずにできるかと思います。
 一輪車の練習の一つは、自分の進みたいように進むのではなく、制限されたコースを練習することでより上達していくものです。

§7.アイドリング

 アイドリングとは、一輪車を振り子のように前後に操作する動きのことです。これができるようになると、一輪車の遊び方も幅が広がるし、一輪車から降りることもなく乗っていることができます。

1.補助ありアイドリング
 一輪車の練習は、ほとんどのものが最初のうちは補助者や補助物を使った方がよいです。一つは型をおぼえてなれてもらうことで、もう一つは失敗からくる恐怖心を取り除くためです。それでははじめにしっかりと補助につかまって乗って下さい。きき足のペダルを一番下にさげて下さい(クランクが地面に対して上下垂直の状態)。この状態から身体を前後にゆすって下さい。ペダルの動く範囲は前後1/4回転ぐらいです(クランクが地面に対して水平状態)。はじめは前進、停止、後進、停止と止まってしまいますがなるべく切り替えをスムーズにして下さい。できるだけ上体は動かないように、最終的には頭を中心に振り子が動くように下半身の動きだけにして下さい。やはりこのときもサドルにしっかりと体重をかけ足にはできるだけ力をいれないようにして下さい。それと、前に動かすのはすんなりと行くが、後ろになかなか行かないという人は後ろにさがるとき上側の足を少したててペダルを後ろへ押しつけるようにするといいです。

2.補助なしアイドリング
 補助ありである程度感覚がわかってきてなれてきたら、少しづつ手を離してみて下さい。はじめのうちはだんだん補助の方へ近寄っていったりしますががんばって下さい。アイドリングの練習をしていると、足が疲れてきます。これはバランスをとるためにペダルを踏む力の加減で調整しているからです。やはり身体全体でバランスをとるようにして下さい。正しいアイドリングとは振り子のように動くのですから、上半身の動きが少なく下半身だけがリズムよく動くようにめざして下さい。アイドリングの練習で一輪車の向く方向が変わってしまいますが、これは補助をかりて練習している段階の人はまだバランスが確実にとれていなくてペダルを強く踏むことによって立て直している証拠です。上手な人はアイドリングを行いながら、意図的に方向を変えたり移動したりすることができるようになります。アイドリングの回数の数え方は前後で1回です。練習は目標をもってはじめは5回ができるようにおこないどんどん回数を増やしていって下さい。昔はよくみんなで1000回ぐらい連続でやったこともあります。それとある程度できるようになったら逆足でもできるように練習して下さい。

3.半回転バック
 アイドリングの練習と並行して、前進の中に半回転の後進をいれてみて下さい。これは、徐々に前進の速度を落として行き、クランクが地面に水平状態になったら、後進し半回転したところでまた前進して下さい。この練習は前進からアイドリングにはいるきっかけをつかむことと後進へのステップになります。

§8.後進

 アイドリングが上手くいくようになったら後進です。やり方は前進と全く同じです。しかし、普段後ろ向きに歩くことはありませんし、後ろを見ようとしてもなかなか見ることができずバランスなどをくずしやすく、どうしても違和感がつきまとうものです。

1.補助あり練習
 練習の手順は、前進の練習と同様に半回転してはバランスをとるようにして、徐々に回転させる回数を増やしていくようにして下さい。いきなり連続して回転させるのではなく、その都度バランスをとりながら後ろにさがって下さい。後進の時はどちらかというとスピードがですぎてしまうようです。ですから十分に補助を利用してなれるようにして下さい。この練習をしている人はすでに一輪車のバランスは身についているはずですから落ち着いて行って下さい。
2.補助者あり練習
 ある程度できるようになったら、補助者に手をもってもらいながら行って下さい。できるだけ補助者には頼りきらないように。後進はなかなか後ろを見ることができません、見ることができない方向へ進むのですから非常に不安があります。ですから、補助者は十分に後方を見てあげて誘導してあげて下さい。

3.その他
 後進は数回転ぐらい行うのは以外と簡単にいきますが、これが何十メートルともなると難しくなります。これは、一つには後ろ向きになれていないことと、見えないことへの不安感があるからと思います。はじめのうちは後ろを見ようとするとバランスをくずしたり、まっすぐ進めなかったりしますから、顔は正面を見るようにして下さい。ですから、後進の練習をするときは、障害物や人があまりいないところでおこなった方がいいかと思います。また、後ろの確認を誰かに見てもらっていた方が安心できると思います。一輪車の練習は恐がっていては進みません。恐さをとりなれるようにして安心して乗れば速くできるようになります。

§9.片足アイドリング

 今までの練習は両足でペダルをこいでいましたが、今回は片足でペダルをこぎます。今までは正しい位置に乗っていなくても、ペダルの操作でなんとかなりました。しかし、これからはそうはいきません。常に、サドルの上に安定した状態で正しく乗らなければ上手くいきません。しっかりと練習しましょう。
 はじめは、手すりなどにつかまって練習すると良いでしょう。普通のアイドリングが調子よくできるようになったら、上側の足をできるだけ軽くしてペダルに力をいれないようにして下さい。意識的に、下側の足だけでアイドリングをやるようにイメージして、上側の足の力を抜いてときどきペダルから離す気分でやって下さい。
 次にいよいよ片足をペダルからはずします。はずした足はどうするかというと、そのまま前に足を伸ばしておく方法もありますが、初心者はフォークの肩の上に乗せて下さい。手すりにつかまって片足をフォークの肩に乗せるとほとんどの人はアイドリングが止まってしまいます。そこで、できるだけ腰を前後に振るつもりでゆすってやって下さい。アイドリングは、前後の振り子動作ですから、リズムを大切にして下さい。肩に乗っている足も利用すると楽に行うことができます。
 片足アイドリングのポイントですが、いつものように視線は下を見ずに前の少し遠くを見るようにする。両手を大きく広げて背筋を伸ばしてバランスをとる。サドルの高さが低すぎると、サドルにどっしりと乗ることができず、足が疲れて楽なアイドリングができません。アイドリングの前後の動かし方は両足のことを思うとはじめのうちはすこしちいさ目に行うと良い。

§10.片足走行

 片足アイドリングが安定してできるようになったら、片足走行の練習です。片足走行では、失敗したときに一輪車がとんでいくことがありますから、周囲には十分注意して下さい。
 片足走行の練習は、片足アイドリングから行う方法と、両足走行から片足をあげて行う方法がありますが、片足アイドリングから始めた方が危険なく、安心して行うことができると思います。練習するときの補助は手すりなどより友達などの手を使った方がやりやすいです。片足アイドリングをまず行います。次に、少し大きめにゆするようにして勢いをつけます。ペダル側の足が前にきたら力をいっぱい入れるのですが、ペダルが下にきたら足の力を抜いて下さい。この、抜くタイミングが難しいと思います。また、前にこぎだす時、友達に引っ張ってもらうとやりやすいと思います。そして前に進んだら、ペダルの足が前側の地面と平行になるぐらいから力を入れて上にペダルが上がりかかったら力を抜くようにして下さい。ですから、スピードは速くなったり遅くなったりします。お尻を後ろに引かないように、一回転毎に体が後ろにいかないようにして下さい。
 両足走行から行うときは、はじめは足をペダルから浮かせるような気持ちで行います。足を浮かしてすぐペダルに戻すという練習もいいと思います。足をあげるタイミングはこぐ足が力を入れたときに思い切ってペダルから離してフォークの肩に足をかけて下さい。なれないとなかなか肩に足がかからないかも知れませんが、片足アイドリングなどで足を肩にかける練習を十分しておいて下さい。

§11.学校における級認定について

 私は(社)日本一輪車協会に所属し技術認定委員をしています。そこで、技術認定基準を1987年に作成しました。これは、国際的なレベルを維持し、わが国の状況。特に協会の支部やクラブの活動実態にあわせて作成されたものですから、小学校などの活動レベルに添わない部分があります。また、各地域、各学校、各社会教育団体等の活動状況にはかなり差があるのも事実です。 ですから、この方法が絶対だということはありません。しかし、ある地域で作成された指導書をみせてもらったとき、上達の段階に無理があると思ったことがあります。
 そこで、簡単な級認定を考えてみました。初級・中級・上級にわけてみました。だいだいクラブ活動で1年間ぐらいでできるようになります。
 各級を厚紙などに印刷し、それぞれの項目に日付とサインを書き込めれるようにして、できたらすぐに日付とサインを書いてあげて下さい。できれば、3回連続してできるたらサインをするようにしたらどうでしょうか。

初級
1.補助付き前進10回転
 片手を支えてもらって前へ10回転進む。
2.前進10回転
 補助から離れてから前へ10回転進む。
3.後方降車
 サドルの前部を持ち、後方にゆっくり片足づつ降りる。
4.前進30m
 補助から離れてから前へ30m進む。
5.補助なし乗車
 何の補助もなしで乗車し前へ5回転進む。

中級
1.方向転換5m
 幅5m以内で180゜の方向転換をする。(右と左)
2.半回転バック
 前進していったん停止し、半回転バックした後また前進する。
3.アイドリング5回
 ペダルを前に半回転後ろに半回転し、状態を保つ。前後で1回を5回行う。
4.アイドリング30回
 30回行う。
5.前進スラローム
 1m間隔の障害物10個を通過する。

上級
1.方向転換1m
 幅1m以内で180゜の方向転換をする。(右と左)
2.後進10回転
 補助から離れてから後ろへ10回転進む。
3.後進30m
 補助から離れてから後ろへ30m進む。
4.片足アイドリング5回
 片足をペダルからはずし、フォークの上に足を乗せアイドリングを5回行う。
5.片足アイドリング30回
 30回行う。

おわりに
 この内容は、パソコン通信「東書ネット」に掲載途中のものを、編集しました。暇を見つけては書いているため完結予定は未定です。実技的な内容を文章だけで表現しているためと、書くことが下手なためますます解りにくくしているかと思いますがお許し下さい。とにかく、一輪車の発展のために何かできないかと思い、自分が思ったことをいろいろと書きました。人によっては違う考えを持っているかと思いますが、ここに、書かれていることはほとんど自分自身で体験してきたことですから一つの方法として参考にして下さい。解らないことがありましたらいろいろとお尋ね下さい。ますます一輪車が発展しますように皆さんも協力して下さい。

1993年7月 林 雅彦

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